この世の全ての傷口に花を捧げよ――髙村薫『李歐』感想

ああ、どうしてこんなに私は揺さぶられながら、この小説の感想を書く為に奔走しているんだろう。もう二ヶ月近く経った。この本を読んでから、ずっとずっとこの本のことを考えている気がする。理由の一つは同性同士の恋愛とロマンティックラブイデオロギーの関係について考えたから。そしてもう一つは、22年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻したから、だと思う。多分。

何のことを話しているの? っていう声が聞こえる気がする。あなた、99年に書かれた小説の話をしているんじゃないの? って。

そうなの。そうなのだけれど、これは冷戦の物語なの。帝国主義が奴隷貿易という悪夢の続きであったように、冷戦も帝国主義と植民地政策という悪夢の続きだった、そのことを描いている物語なの。

そう言って即座に納得して貰えるかと言われると、自信がない。そう言われても、って顔をされそうだ。
――だったら、ねえ聞いて、私が考えていること。私が揺さぶられている理由を。長くなるけど、ちょっと我慢してね。

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