この愛情に名前は付けない――『天山の巫女ソニン』感想

菅野雪虫『天山の巫女ソニン』1~5巻を読みました。外伝が2巻ほどあるようですが、ひとまず本編を読み終えたということで。

読んで「!」となった小説はなるべく感想を書くことにしているのですが、今回はどう感想を書けば良いか迷います。ソニンやイウォル、ミン、クワン、イェラの成長が瑞々しい物語なのですが、心動かされたポイントは必ずしもそこだけではなく……。
ということでつらつらと考えながら感想を書きました。以下ネタバレがありますのでお気を付け下さい。

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楽土の幻

2014年に史文庫~ふひとふみくら~の唐橋史さん主催で発行された『日本史C』というアンソロジーがあったのですが、そちらに寄稿した小説です。Web再録的な感じでこちらに格納します。

~登場人物と少しの補足~
中臣鎌子……中臣鎌足のこと。作中で改名しています。彼が鹿島の神官の子であるというのは『大鏡』などに見える伝説です。

軽皇子……後の孝徳天皇。中大兄皇子の叔父に当たります。

中臣真人……鎌足の長男。出家して定慧と名乗ります。今作では、彼が上宮王家(聖徳太子の一族)の生き残り、弓削王であるというフィクションを展開してます。彼の

出家と渡唐については、その年齢も併せて謎が多いです。

中臣史……後の藤原不比等。彼が中大兄皇子とその同母妹の間人皇女の子であるという設定はフィクションですが、藤原不比等は中大兄皇子の落胤ではないかという伝説は様々な史料に登場します。

伝説に基づいたフィクション多めの小説ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。

 

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朔太郎の担う両義性――虐待の被害と加害、そして救済

書こう書こうと思って書いていなかった、萩原朔太郎の前半生の救済作としての『月に吠えらんねえ』について書きました。

後半生は娘の萩原葉子さんの作品によって赦された朔太郎なのではないかな、と思います。では前半生は?というような内容です。

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阿選の折句

Twitterで『十二国記』を題材に短歌を詠まれる方々がいて、常々素敵だなあと思って鑑賞しています。
短歌を作る人に長年憧れがあるのですが、いつも作っては「これ、私向きの様式じゃないな……」と思って諦める事を繰り返しています。でも鑑賞は楽しくて、いつも「十二国記短歌」のタグを楽しく眺めている。二次創作短歌っていう世界自体、とても興味深いし。

私は自分で短歌を作ることについてはいずさ(仙台弁)を感じてしまう訳ですが、あいださん(@9mor1)という十二国記短歌を折々投稿されている方が「折句どうですか」とおっしゃっていて、折句なら作れそう、と思ってたまに作っています。

折句はあいうえお作文みたいな感じで、五七五七七、それぞれの句の先頭の文字を繋げると一つの言葉になるというもの。二次創作ですから、これを作品のキャラクターとか固有名詞でやってみる、という感じ。私は阿選でしか作っていませんが()色々なフレーズで楽しめる良さがあるなあと思います。
あいださん曰く、折句は呪術っぽいし、折句は愛を捧げる行為、とのこと。作っていると何だか分かるなあと感じます。キャラクターへの愛情と、言葉選びの試行錯誤が噛み合うというか。

以下、備忘録的に作った折句を格納しておきます。たまに増えるかも。
改めて眺めてみると、く、暗い……!

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オマージュであるが故の辛さ――綾辻行人『暗黒館の殺人』感想

今年の春先にTwitterで騒いでいましたが、綾辻行人の『館シリーズ』を読みました。ヲタク世界に足を踏み入れたきっかけは講談社ノベルスだった(はやみねかおる『虹北恭助シリーズ』から入って、文庫版のCLAMPの挿絵を手掛かりに田中芳樹を読むようになり、そこから小野不由美へと広がり……ってな小学五年生であった)ので、何だかこう、ホームグラウンドよただいま戻りました感に浸りながら楽しく読んでいたのです……が。
『人形館の殺人』辺りから「ん????」となり、『暗黒館の殺人』で無事目を焼かれましたとさ。あー……。
江戸川乱歩『孤島の鬼』が以前から好きだったので、『暗黒館の殺人』は二重三重にヲタク的なぱっしょんが爆発する読書になってしまいました。
以下ネタバレ交えつつ好き勝手に感想を書いてみました。(リアルタイムに書いていたんだけれど、納得いかずに書いたり消したりしていたもので)

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遙か7の「義」とは何か?――命よりも価値あるもの

『遙かなる時空の中で7』の中で語られる「義」って何なんだろう、ということについて書きました。『戦国無双2』の「義」をブラッシュアップしたものであると同時に、『遙か7』の幸村ルートをより良く解釈する為のキーワードでもあると思います。そしてまた、『遙か7』の物語が私達プレイヤーに訴えてくる一つの思想にも、深く関わってくる言葉です。

全ルート開封済みの人間が書いています。
具体的には幸村・兼続・五月ルートのネタバレががっつり出て来ます。割と幸村ルートがトゥルー、みたいな意識で書いているので、そこにもやっとする人がいるかもしれません。ごめん。

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『そらごと申す大納言』読みました!

唐橋史『そらごと申す大納言』(Amazonページへリンク)

唐橋さんの新刊『そらごと申す大納言』を読みました。表題作の他に『雲を追う少年』という作品が収録されています。どちらも平安時代が舞台(後者はややそこからはみ出しますが)の短編です。前者は壮大でありつつもメルヘンで可愛らしい少女と祖父との物語、後者は苦しい時代の現実にそれぞれ立ち向かう少年達の物語……というところでしょうか。
余り言うとネタバレになってしまうのですが、あのね!もうね!さいこーなんですよ!!!(ボキャ貧)以下さいこー!な理由をつらつらと書きます。一応ストーリー上のネタバレは回避してます……が、キャラの事はあれこれ書いているので気になる方は読まない方が良いかもです。

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楽土の幻

 

唐橋史さん主催のアンソロジー『日本史C』に寄稿した作品です。
先日Twitterで定恵の話が出たので、そろそろアップしようかな?と思いこちらへ。
(私の記憶では自作品単体でのアップは可能だったかと思うのですが、もしまずかったらどなたか教えてくださ……)

ルビ振りができない(正確にはHTMLでできるけど面倒くさい…)ので<>で括っています。読みづらいかと思いますがご容赦ください。
言葉遣いに気になる点があったので、そこだけ修正しました。

色々妄想が炸裂してるなあ…。

 

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