最期の言葉

 以前、このブログにこの記事と同タイトルの「最期の言葉」という記事を書きました。CLAMP『X』の16巻において、星史郎が発した最期の言葉とはどのようなものかを論じた記事です。

 前回の「『賭』の勝敗」の記事と同様、こちらも以前の記事は非常に舌足らずで分かりにくい書き方になっていました。 今回、論旨はそのままに全面改稿したものをここにアップします。
前回の「『賭』の勝敗」の記事を踏まえた内容になっていますので、そちらをお読みの上でこちらにも目を通して頂ければと思います。

 2024年夏頃には、この記事と前回の記事、それから他の文章をいくつか併せて、CLAMP作品批評同人誌として本の形にできたらと思っています。Blueskyやこちらでもアナウンスする予定ですので、ご興味のある方は是非に。

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「賭」の勝敗 

  以前、このブログに「賭けの勝敗」という記事を投稿しました。CLAMP『東京BABYLON』と『X』で語られる星史郎と昴流の物語について、一読して分かりにくい部分を説明した記事……の筈だったのですが、読み直してみると上述の記事自体が分かりにくく、説明の足りない文章になっていましたので、ここに全面的に改稿したものを投稿します。

 もしお手元に『東京BABYLON』や『X』があるようでしたら、軽くで構いませんので、是非一度再読した上で本稿をお読み頂けたらと思います。
 お手元にない方に向けて、簡単に第一節で物語のあらましを書きました。不足の多い説明だとは思いますが、こちらをお読みになった上で記事の続きを読めば、何となく話にはついていけるかと思います。

 なお2024年夏頃には、この記事と、これの続きでもある「最期の言葉」、その他いくつかの文章を書き下ろして、CLAMP作品批評同人誌として本の形にできたらと思っています。Blueskyやこちらでもアナウンスする予定ですので、ご興味のある方は是非に。

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『夕炎の人』落ち穂拾い

11/11の文学フリマ東京37、お疲れ様でした&ありがとうございました。
久しぶりの即売会参加でドキドキもしていたのですが、おかげさまでつつがなく終えることができました。

当日、スペースに来て下さった皆様ありがとうございました。周囲のサークルさんと比べて「どんな小説書いているかちょっと良く分からんな」って感じのところなのに(これは卑下ではなくて実際にそうなんですよ……)、立ち止まってくださる方がちらほらといるというのは嬉しいものです。
差し入れを下さった方もありがとうございました。美味しくもぐもぐしております。

さて、『夕炎の人』というやっぱりまた良く分からない本を作って刷ってしまいました。一言で「こういう小説です!」と言えないものばかりを作っている気がします。
ちょっと落ち穂拾い的なことを書いておくのも良いかしらと思ったので、ここにまとめました。要するに作者の力量不足の言い訳ですね。言い訳するのは格好悪いことなのだけれど、言い訳しないと本人も忘れていくので、言い訳をするだけした方が良いかもしれないなあ、なんて思ったので書いてみます。

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『わたしのことり』を書いて考えたことをいくつか

ちょっとこのWordPressに置く内容としてどうかなあ……!?っていう気持ちが今更湧いたので、くるっぷに移動しました。難しいね。

私の気持ちとしては真面目に考えたことだし、これはこれで……という感じなのだけど、テーマ的にはもう少し隠れた方が良いのかもしれぬ。難しいですね。

『とはずがたり』のこと

光文社古典新訳文庫から出ている、佐々木和歌子訳『とはずがたり』を読みました。かなり果敢な現代日本語訳だったのですが、現代語で感情移入しながら読める本になっていて、大変心揺さぶられる読書体験になりました。
『とはずがたり』は高校生の時に図書館で読んで以来、妙に記憶に残って(ある意味当然)、時折訳注を借りて走り読みしたりしていたのだけれど、こんな風に初めから終わりまで一気に読むというのは初めてでした。

余りに良かったので、勢いで講談社学術文庫の次田香澄『とはずがたり 全訳注』上下巻を買って読み比べたりとかしています。佐々木氏と次田氏とでは『とはずがたり』や後深草院二条に対する眼差しが少し異なっていて、そのズレも興味深いなあと思ったり……。

ということで、まとまらないけれど感想を書いてみたいと思います。

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この世の全ての傷口に花を捧げよ――髙村薫『李歐』感想

ああ、どうしてこんなに私は揺さぶられながら、この小説の感想を書く為に奔走しているんだろう。もう二ヶ月近く経った。この本を読んでから、ずっとずっとこの本のことを考えている気がする。理由の一つは同性同士の恋愛とロマンティックラブイデオロギーの関係について考えたから。そしてもう一つは、22年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻したから、だと思う。多分。

何のことを話しているの? っていう声が聞こえる気がする。あなた、99年に書かれた小説の話をしているんじゃないの? って。

そうなの。そうなのだけれど、これは冷戦の物語なの。帝国主義が奴隷貿易という悪夢の続きであったように、冷戦も帝国主義と植民地政策という悪夢の続きだった、そのことを描いている物語なの。

そう言って即座に納得して貰えるかと言われると、自信がない。そう言われても、って顔をされそうだ。
――だったら、ねえ聞いて、私が考えていること。私が揺さぶられている理由を。長くなるけど、ちょっと我慢してね。

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罪と赦しのある地平へ――有栖川有栖「火村英生シリーズ」感想

年末年始の休みを使って、有栖川有栖「火村英生シリーズ(作家アリスシリーズ)」を読みました。随分以前から、「お前は絶対にこのシリーズが好きだから読め」と言われていましたが、漸く読みました。案の定大好きになりました。勧めてくれた周囲の皆様、ありがとうございます。

この1月11日に出た最新刊を含め、27冊のかなり大部なシリーズなのですが(そしてシリーズはまだまだ続くのですが)、作者の文章が非常に綺麗で読みやすかったこともあり、さくさくと読み終えました。

小説27冊を俯瞰した感想を書くなんてやったことがないので、ちょっとあたふたとしてノートなどを作ってみたりしました。楽しかった。
ということで、以下毎度のテンションがおかしい感想です。シリーズのあれこれについてネタバレがあります。長いし、ここで書き切れなかったこともあるので、もしかしたらまた別記事にするかもしれません。

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この愛情に名前は付けない――『天山の巫女ソニン』感想

菅野雪虫『天山の巫女ソニン』1~5巻を読みました。外伝が2巻ほどあるようですが、ひとまず本編を読み終えたということで。

読んで「!」となった小説はなるべく感想を書くことにしているのですが、今回はどう感想を書けば良いか迷います。ソニンやイウォル、ミン、クワン、イェラの成長が瑞々しい物語なのですが、心動かされたポイントは必ずしもそこだけではなく……。
ということでつらつらと考えながら感想を書きました。以下ネタバレがありますのでお気を付け下さい。

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『琅琊榜』を見て、中国のエンタメ事情を考えた

中国ドラマの『琅琊榜』をAmazonプライムで見ました。いや~長かった…。途中で挫折して放置していたのだけど、一念発起して完走しました。

中国(語)ドラマの定番全部盛りみたいなところがあって、後宮の陰謀劇あり、お世継ぎ問題あり、朝廷の派閥争いあり、「私は養子だったのか!?」あり、復讐劇あり、ワイヤーアクションあり、不思議な薬と病あり、ラブロマンスあり、その他諸々全部揃っていた……ね!という感じです。

親世代・子世代に跨る重厚な人間劇のウェイトが高く、復讐譚としても非常に面白かったのですが、もやもやする部分もあり、しっかり言語化しておきたいなあという気持ちにもなったので書きました。

以下『琅琊榜』のネタバレがあります。

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朔太郎の担う両義性――虐待の被害と加害、そして救済

書こう書こうと思って書いていなかった、萩原朔太郎の前半生の救済作としての『月に吠えらんねえ』について書きました。

後半生は娘の萩原葉子さんの作品によって赦された朔太郎なのではないかな、と思います。では前半生は?というような内容です。

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